失敗を恐れずに前進
フレドリクソン由貴子(旧姓、曽篠由貴子)さん(2001年卒業、国際関係学部 / ウイラメット大学2000年卒業)

(広大なキルナ/スウェーデンの自然。ハイキングの途中で)

初めての海外留学
高校時代はソフトテニスでインター杯に出場するほどスポーツ少女でしたが年少のころから海外への興味がありました。きっと映画好きの父がディズニーのアニメーションを私にみせたことがきっかけで日本とはまた違う世界があるのだと子供心に感じでいたのかもしれません。私が進路を決めるにあたりTIUの充実した留学プログラムを知り、受験することにしました。

そして在学中にTIUAに参加したことが私の人生のターニングポイントであったといっても過言ではありません。19歳の感性豊かな時期にこのプログラムに参加できたことは、言葉にできないほど実りのあるものでした。文化の違いを経験し、生き方・価値観とは自分の生活する国・文化に大きく影響を受けていること、つまり絶対だと思っていた生き方・価値観はいとも簡単に書き換えることができるということを知り、無限の可能性を感じることができました。

その後大学三年のときにウィラメット大学への編入・奨学金試験に合格し、再度アメリカのオレゴンで社会学を勉強することになりました。一生の友人に出会い、その後の人生に大きな影響を与える気付きを得られたことは私の人生における宝物です。  
(ウィラメット大学、WISH寮の友人達と)  

社会人スタート、そして再度海外へ
卒業後はネットワーク機器の販売・サポートを提供する株式会社ティ・アイ・ディに就職し営業として全く今までとは違う世界で社会人としてたくさん学ばせていただきましたが、社会学への興味を捨てきれず、2年後にロンドン大学ゴールドスミスカレッジにて社会学の大学院プログラムに参加しました。アメリカでの経験があるとはいえ、180度違う環境でした。自立して独自に自分の勉学を進める形で周囲のエリートたちに囲まれ、自信を失うことも多々ありました。また生活していた場所はロンドンでも2番目に危険な地域でかつあげ、麻薬を売っている人もおり、大学院生活を無事に終えられるのか心配もありました。 なんとか無事に大学院も終え、日本に戻るつもりでいましたが、その時につきあっていたスウェーデン人の彼、(現夫)についてスウェーデンの北、北極圏内にあるキルナ市に引越ししました。

 
(ロンドン留学時代のフラットメイト達と) 
 

スウェーデン、キルナでの生活のはじまり
キルナは鉄鉱石の鉱山で有名な人口2万人ほどの町です。ここでスウェーデン語もろくにできない私が仕事を探すわけです。今までの勉学など全く役に立たず、あるのは鉱山関係の仕事ばかり。知識も経験もなく全く仕事がみつかりませんでした。最終的にインターンとしてあるホテルで仕事ができることになりました。

ここで大きなカルチャーショックを経験します。インターンといっても週末は一人でホテルの仕事をするのです。ペンションのような大きさで部屋数は13部屋です。とはいっても一人で朝食サービス、その後の片付け、そして部屋の掃除をし、合間にレセプションや予約の仕事、更にはカフェ・レストランも併設していたのでそこにお客様がきたらその仕事もこなし、夜はレストランの仕事でした。最初はコックがいたのですが、ある日突然現れなくなり、社長に電話をすると「メニューがあるでしょ。それを由貴がつくるんだよ。」というのです。スウェーデン料理だってまだ作ったこともない私がメニューだけでわかるわけありません。

3日間ほどお客様がくると「コックは病欠です」とごまかし、その3日間で料理をならいました。一人で働いているときにヒューズが飛び、お客様を真っ暗なレストランに残し、作業手袋をつけてヒューズを直したこともありますし、驚くことばかりでしたが、予想もしない問題を自分で解決することから自信がつきました。ただ大学や大学院で勉強したことが活かせていないとホテルのトイレ掃除をしながら涙することもありました。

その後、スウェーデン語をもっと勉強しようと一年間スウェーデン語学校に集中して通いました。その後も就職活動はさっぱりで、スウェーデン語学校で知り合った移民の友人の紹介でスーパーの量り売りお菓子を補給するパートタイムの仕事をしながら、正社員の仕事を探し続けました。職安にいくと中華料理のウェイトレスかダンプトラックの運転手の仕事しかないと言われ情けない気持ちと私を必要としている会社が一つもないことを悲しく思い、スーツケースに荷物をまとめて日本に帰ろうかという気持ちになりました。

 
(冬のある一日、こんなに雪が積もりなかなか出かけられない日も) 
 

キルナガイドツアーとの出会い
そんな時、キルナガイドツアーという観光会社が予約オフィスのスタッフを探しているという話を聞きます。早速履歴書を送ると面接に呼ばれ、エネルギッシュで面白い、冗談ばかりいう社長に出会います。この彼との出会いが私のキルナでの生活をがらっと変えました。面接の時点ですぐに感じたのですが私を移民としてではなく、私の経歴、私の得意な部分を見てもらえた、そんな気がしました。それまでは苗字がスウェーデン人ではないという時点で対応がなんとなく冷たく、私がどういう人間か話すチャンスも与えてもらえないと感じることが多かったのです。この社長はのちにキルナ市長に当選するのですが(現在も市長)、とてもオープンで寛容で、今でも感謝の気持ちでいっぱいです。

キルナガイドツアーで仕事をもらえて大喜びしたものの、翌日からいきなり電話対応、予約をすることになり、スウェーデン語学校にいったとはいえ、まだまだのスウェーデン語力の私には大変なことでした。緊張しすぎて周りの人に私の心臓の音が聞こえているのではないかと思うほど、ドキドキしていました。キルナは冬の観光シーズンで一年分の売り上げをあげるほど12月から3月の4ヶ月は戦場のような凄まじさなのです。ここにいきなり投げ込まれ一日何件もの予約をこなし、お客様の送迎をし、お土産屋でも仕事をしました。社長が私にチャンスを与えてくれた、これを絶対に無駄にしたくない、移民だから仕事がスウェーデン人よりできないと思われたくないという気持ちがとても強く、絶対に社長に後悔させないぞと頑張りました。

すると一ヶ月もしないうちに私の予約数が他二人の同僚の倍に達していることがわかりました。その後も色々なことがありましたが、このキルナガイドツアーが大好きで13年たった今でも勤めています。勤めてから3,4年後に予約課のリーダーになり、その後採用などにもかかわるようになり、会社全体のことも社長と二人三脚で運営していくようになりました。そして社長が2019年の市長選挙で当選したことをきっかけに、私が社長の役に就く事になりました。

(株式会社Kiruna Guidetur オーロラツアー、スノーモービルツアー)

社長としての挑戦
私が勤め始めたころは社員はスウェーデン人だけで私が唯一の外国人でしたが、この数年は様々な国籍の人が働いています。多いときは社員25名中、11カ国の違う国籍だったときもあります。私が社会学を学んでいるとき、色々な国籍の人と仕事をすることが夢でもありました。それはきっとアメリカ留学時代に各国の留学生と仲良くなり国を超えた個人同士の付き合いの素晴らしさを経験したからだと思います。なので国際色豊かな環境で働きたい願いはずっとあり、こんな北国の小さな町でそんな私の願いが知らないうちに叶ったのです。

国籍が違う同僚との仕事は刺激がたくさんです。価値観、宗教、それまでの生活、育ち方、すべて違いますし、仕事に対する姿勢は同じ国の中でも違うのですから、言葉で理解しているようでも誤解が生まれたりすることも多々あります。同僚の何人かはとても議論好きで責められるような質問をされてタジタジしてしまうこともあります。議論は議論ではっきり意見交換をすべきだと思う人が多いように思います。そして「私が」「僕が」そう思うのだから、という「個」を大事にしている価値観を垣間見ます。そういう個性の強さこそが会社の力でもあり、それをまとめてよい方向にもっていくというのが私のチャレンジでもあります。

でも不思議と違う国籍を超えた同じ目標にむかう仲間の間でのつながりが生まれているのも事実で、それを実感するときに毎回こんな環境で働けていることに感謝します。みんなの共通点はキルナの素晴らしい自然を色々なアクティビティで世界中の人に経験してもらいたい、そのために一生懸命仕事をする、そこでつながっているのだと思います。

 
(仕事中の風景)

(フレドリクソン由貴子/旧姓、曽篠由貴子さんプロフィール)

  • 埼玉県出身、昭和学院高等学校卒業
  • 1995年4月 東京国際大学国際関係学部入学
  • 1996年    TIUAプログラムに参加
  • 1998年9月 Willamette Universityへ編入
  • 2000年5月 Willamette University卒業
  • 2001年3月 東京国際大学国際関係学部卒業
  • 2001年4月 株式会社ティ・アイ・ディに就職
  • 2003年8月 ロンドン大学Gold Smith College(大学院)
  • 2004年8月 ロンドン大学Gold Smith College Master Degreeを習得
  • 2004年10月 からスウェーデン最北のキルナ市に移住
       その後2007年12月に株式会社Kiruna Guideturに就職
       2019年から社長に就任

    Kiruna Guidetur 会社ホームページ
    https://www.kirunaguidetur.com/
    Vänortsgatan 8
    98132 Kiruna Sweden
    info@kirunaguidetur.com
    +46 980 81110

    TIU 霞会シンガポール支部