銀座木挽町通りに、お店を構えて70余年の老舗日本料理の『銀座こびき』があります。
金子大史さんは、祖母が創業した「銀座 こびきの二代目店主の長男として誕生。幼少の頃から時間のあるときに仕事を手伝ったり、築地市場にも顔を出したりしている中で、自然と料理に興味を持つようになり、いつかは店を継ぐのだろうという思いを抱いていたそうです。
金子さんは東京国際大学1997年度の卒業生で、卒業後都内の日本料理店での修行を経て実家に戻り、父と弟と共に厨房を守っていて、火を使う料理全般と、地酒のセレクトを担当されていました。
父親であり先代の金子弘一さんは、国際商科大学(現東京国際大学)創学時の2期生ですが、2019年に急逝され、金子大史さんが銀座こびきの経営を引き継いでおられます。
店主の金子大史さんは、和食全般の修業年数は25年にもなるそうで、おいしい料理を出せるよう生産者からの直接仕入れなどに日々努力されています。70余年の歴史を持つ老舗「銀座こびきの料理とおもてなしについてお尋ねしました。(ホームページより一部抜粋)
「銀座こびき」の自慢の一品」
『江戸前寿司』は寿司割烹からスタートした店の基本柱の一つ。
元々、寿司割烹という形で創業したということもあり、江戸前寿司はこちらのお店の基本の柱の一つであり、欠かせないエレメンツと言います。そのため、コースの〆にも寿司を提供していて、宴会客に好評だそうです。
こだわりの食材
生産者の熱い思いが伝わってくるこだわり食材も取り寄せて使用。
生産者と直接話し、作り手の熱意を感じられる食材を色々と取り寄せています。宮城東松島の牡蠣や宮城大曲浜の海苔、一子相伝の希少な山形の里芋「甚五右ヱ門芋」など、料理人心をくすぐる食材は美味しさも格別です。
おもてなしの流儀
伝統と本質を忘れずに、皆様に料理とくつろぎを提供。
代々受け継いできた基本をたいせつに、時代の風をどんどん取り入れながら、毎日の瞬間、一期一会を皆様に愉しんでいただけるように、いい料理と心地よさで、おもてなしするよう心がけていらっしゃいます。
居心地の良さが抜群なので、ゆっくり食事とお酒を楽しめる。
滞在時間が3時間を超えるゲストも多い、ということからも、お店の居心地の良さがわかるというもの。落ち着いて食事とお酒を味わえる、こんな店を行きつけにできれば、粋な大人の仲間入りができますね。
先代の金子弘一さんの思い出
父親であり先代の金子弘一さんは、国際商科大学(現東京国際大学)創学時の2期生で、
霞会(同窓会)活動にも積極的に協力して頂きました。残念ながら2019年に1月に急逝され、現在は長男の金子大史さんが銀座こびきの経営を引き継いでおられます。
マッキー 牧元さん(味の手帖 編集顧問主筆)のFacebookで冥福をお祈りされていました。「こびき」には、仕事の垢がはらりと剥げ落ち、都会の速度から遠ざける、快感が待っている、と述べられていました。
<2019年1月19日マッキー 牧元さん(味の手帖 編集顧問主筆)のFacebookより>
東銀座の「こびき」に出かけると、どうも長居をしてしまう。
飲んでいるうちに陽気になって、つい、飲みすぎてしまう。
「お前はどの店でもそうじゃないのか」と、指摘されれば反論できぬが、この現象は僕だけではないようである。
連れて行った友人や女子も、後輩や愛人(少し見栄)も、65歳以上の諸先輩方も、一同ニコニコと、酔っ払う。
背広姿の常連客たちも、愉快に杯を重ねている。
つい先日は、酒の飲めないおじさんに同行を願ったが、「いい店ですねえ」と、終始幸せそうな顔で過ごされていた。
ううむ。一体なぜだろう。
魚もうまい。野菜もいい。酒も揃っている。しかしそれだけではない。
なにかが作用して、長居をさせ、快活を呼び、酒を呑ませるのである。
と、ここまで考え、はたと思い当たった。
「人」である。
「こびき」で働く人々の心意気が、知らず知らずに胸のうちに入り込んで、気分を上向きにさせるのではないかと。
一階のカウンターでどっしりと構える親父さん、二階や三階を切り盛る娘さんやお嫁さん、厨房に立つ、二人の息子さんにお母さん。
ご家族の立ち振る舞いは様々ながら、みなさん、働くのが好きで好きでしょうがないという心持に、あふれているのだ。
それが気働きの良さとなり、我々の気分を、つかみ、揺り動かすのである。
心持ちは、ほかの若い女性スタッフにも乗り移って、実にすがすがしい。実際ここで働く人たちは、やめたあとも家族同然の付き合いをしているという。
この写真を見ても、一目瞭然である。
やはり居酒屋の基本は、家族経営である。互いの信頼とつながりが安心感を生み、家族を直接的に守り立てる働き甲斐が、活気を作る。
安心と活気が、飲み手の背中をどんと叩いて、盃持つ手を気分よく運ばせる。
それもこれも、親父さんの存在が大きいのだろう。
「こびき」では、飲み物の注文が終わると、ざるに並べられた本日入荷の魚が、お客さんに見せられる。
こうしたプレゼンテーションは、ややもすると演出過剰となるが、ここでは、魚を食べてもらいたいという素直な思いが、滲んでいる。
それゆえに、よし食べてやろうじゃないかと、気合が入り、顔はにたつき、こいつを刺身で、こいつは煮魚、こっちは塩焼きと、嬉々として頼んでしまう。
頼み終わると突き出しである。ある日は、とこぶしと小ぶりなサザエの煮物。ある日は、熱々の肉豆腐。
フフフ、まいったなあ。最初から酒を飲ませる意欲満々なんだもの。
悦凱陣や秋鹿、宋玄や鶴齢、神亀や奥播磨。
思いは千々に乱れ、うれしい悩みに頭をひねる。
お造りが運ばれた。〆鯖の上品な脂が喉に落ち、本まぐろの鉄分が歯にからみ、コハダの粋が舌に切れ込む。
勝浦や銚子、淡路や松江の滋味が、ざぶんとしぶきをあげる。
お次は塩焼きときた。白き身をむしれば、ほんわりと甘いまこがれい。塩分ほどよく、骨までしゃぶる。
合間に、「豆あじの揚げせんべい」といってみようか。
カリカリ前歯で齧って、慌てて叫ぶ。
「ビールを至急ください!」
おっと、煮魚の登場だ。今夜は、常磐沖の釣り黒めばるにした。皮の黒と煮汁の鼈甲色が溶け合って、息を飲ませる深さと艶やかさである。
皮に入った包丁目が弾けて肉が盛り上がり、早く食べろと誘っている。
箸をつければ、ほろりと身が崩れ、春の香りと甘い味わいがほどけていく。
滑らかながらたくましい筋肉を主張する身が、プリリと踊る。
顔を崩して、「うーん」と一唸り、すかさず神亀のぬる燗をやる。
ここで野菜といってみよう。茄子の精進煮や里芋の煮物は舌に優しく、きんぴらはこっくりと味わい深く、いずれも人情が染みている。
ちきしょう。まだ酒を飲ませる気かと、キスの天ぷらやバクライを頼んで、お銚子を重ねていく。
呑むほどに居心地よく、時間がゆるりと過ぎていく。
「こびき」には、仕事の垢がはらりと剥げ落ち、都会の速度から遠ざける、快感が待っている。 親父さん。金子弘一さん。
あなたの屈託のない、豪快な笑顔に、もう会えないのは、とても寂しいです。
でも長男の魚料理、次男の握る寿司を、また食べに行くからね。
心より、親父さんのご冥福をお祈りいたします。
皆様のお越しをお待ちしています。
「こびき」は銀座・木挽町通りに店を構えて60余年になりました。
父親である先代金子弘一の後を継ぎ、毎日築地に出向き仕入れる海の幸を使った料理、こだわりの銘酒など、変わらぬ味と家族の温もりあるおもてなしをお届けしようと日夜努力しています。
日頃の飲食、大切な接待、ご友人たちとの会食などにも「こびき」をお気軽にご利用いただけると大変有難いです。当店ご利用に際は、ぜひともお声がけ頂ければ大変うれしいです。今後とも皆様方の温かいご愛顧とご支援のほどをよろしくお願いいたします。
(こびき店主 金子大史)
(金子大史さんプロフィール)
1973年 | 東京都生まれ 埼玉県立伊奈学園総合高校卒業 |
1997年 | 東京国際大学商学部(29期)卒業 松井ゼミ ラグビー部 卒業後、都内の日本料理店での修行を経て、銀座こびき入店 |
2019年 | 銀座こびき3代目店主となる |
銀座こびき
東京都中央区銀座6-16-6
Tel: 03 3541 6077
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