私は日本とマレーシアとの交流を行う公益社団法人(NGO)に所属している関係で、これまでマレーシアからの留学生で東京国際大学に進学した方々や、マレーシアやシンガポールで活躍する大学OBの方々とご縁があったことから、シンガポール在住の大先輩である落合さんのご紹介もあり、OB会マレーシア支部にも監事として参画させて頂いております。
1991年に教養学部国際関係学科を卒業、大学院社会学研究科に進学し、1993年に卒業しました。学部では渥美ゼミ、桑原ゼミに在籍、大学院では桑原研究室で東南アジア地域研究を専攻しました。東南アジアの中でも独特の多民族社会に関心を持ったマレーシアについて研究し、修士論文は「マレーシア語の中の外来語要素の研究」というテーマで書きました。マレーシア語(マレー語)は大学院の時から勉強し始め、今までこつこつと続けています。 大学院在学中に社団法人日本マレーシア協会(当時、現在は公益社団法人)に入局、現在に至っています。
ご存知のように、日本とマレーシアは80年代、特にマハティール首相の就任後、様々な分野で交流が促進され、特に経済的な関係は非常に強いものとなりました。そういった中で日本マレーシア協会ではどのような役割を果たしてきたかというと、日本国内ではマレーシアからの留学生支援活動に力を入れてきました。ルックイースト政策による日本への関心の高まりによって、マレーシアから国費留学生だけでなく私費留学生も多く来日するようになりました。特に私費留学生は、来日後、査証、入居、進学、就職など、様々な場面で身元保証が求められ、それによるトラブルも多く見られました。そこで機関保証として大勢の私費留学生の身元を引き受けてきました。その中に東京国際大学生もいましたので、そのことが卒業後、私が大学と再びご縁が出来るきっかけとなりました。
その他、マレー語講座や赴任者講習の実施、国際シンポジウムの開催、機関誌の発行、マレーシア書籍の邦訳書発行、観光促進への協力などの活動を行っています。特に近年、マレーシアで研修プログラムを行う教育機関などが増え、いわゆるロングステイ先としてシニア世代の関心も高まっていますので、マレーシア政府と共催でそれらに関するセミナーなども開催しています。
マレーシアでは、環境保全プロジェクトとして、貴重な熱帯雨林の減少が進むボルネオ島のサラワク州で、1995年から熱帯雨林再生活動を行っています。個人のご寄付、企業や団体等からのご支援を得て、これまで約1600ヘクタールの60万本の在来種等の植林を実施し、現在も継続しています。また、貴重な生態系の保護と沿岸地域の暮らしを守るために、マングローブ林の再生活動も行っており、ボルネオ島のサラワク州と半島部のクダ州の2か所において、地域の人々の参加を得て、育苗や植林活動を行っています。
私は、前述の熱帯雨林再生活動の担当者として、年間4、5回はマレーシアを訪れ、現地の政府、大学、地域村落関係者などとプロジェクトを推進しています。現在非常勤講師を務めている大学では、学生のために国際協力活動体験や海外の大学生との交流などを通じて、学生の国際的な視野を広げ、英語力の向上も図ろうとするプログラムを、学科やゼミ単位で積極的に取り入れようとしています。東南アジアのマレーシアは、日本から遠くなく、治安もよく、多民族・多文化社会を学べる地域であるとのことで、私が推進しているプロジェクトの活動に、夏春休みを利用して定期的に学生が参加するようになり、大変うれしく思うとともに、自分の仕事を通じて、もっと学生に様々な機会を提供していきたいと思っています。
大学を卒業して約30年になりますが、今考えると、あれだけ海外、特に開発途上地域であった東南アジアや中近東などに関する教員や授業が多かったというのは、国内で最も早く国際学科を設置した大学として、先進的なものであったと思います。たまたま東南アジアのマレーシアと関係する仕事をずっと続けてきたので、時間の経過による時代の変化を強く感じています。顕著な例が、近年、マレーシアから日本へ訪れる人の数が、日本からマレーシアを訪れる人の数より多くなっていることです。これは大きな変化です。
一般的に、大学を卒業すると40年ほど社会で働くわけですが、今の大学生にとって東南アジア地域は、仕事を通じて最も密接に接する地域の一つになることは間違いないと信じています。TIUがこれからも学生にとって30~40年先を見越した学びや機会を提供できる大学であることを切に願います。
ボルネオ島サラワク州の植林活動地域の人々
書籍出版交流会議でマレーシア教育大臣と
(新井卓治さんプロファイル)
公益社団法人日本マレーシア協会 専務理事 (URL http://www.jma-wawasan.com)
教養学部 1991年卒 桑原ゼミ、大学院社会学研究科1993年卒
大学院在学中に同協会へ入局、1997年から現職。
複数の大学(文教大、日大、東外大:2019年度現在)で非常勤講師を務める(マレー語、東南アジア地域研究)ほか、マレーシア民族舞踊団を主宰し、各地で公演を行う。
著書に『今すぐ話せるマレーシア語』、『マレーシアを旅する会話』、『まずはこれだけマレーシア語』など。