トントン拍子に進まなかったことが、むしろ良かった!
西舘崇さん(2001年卒業 国際関係学部国際関係学科 下羽友衛ゼミ ESS TIUA)

共愛学園前橋国際大学内にて(2020年撮影)
共愛学園前橋国際大学内にて(2020年撮影)

13年間の大学生活を経て・・・2016年4月から念願の大学専任講師に
東京国際大学を卒業したのは2001年3月でしたが、その後、大学院に入るための院浪をして、2002年4月から東京大学の大学院に進学しました。そこで3年かけて修士号を、5年かけて博士号を取得しました。学部時代から数えると計13年間、大学生活をしていたことになります。
 
大学院を修了した後もすぐには就職ができず、研究者として外務省やシンクタンクなどで働いたり、大学非常勤講師をしたり、塾講師をしたりしていました。2016年4月より、共愛学園前橋国際大学にて専任教員として働き始めました。
 
専任になるまで長い道のりでしたが、それでもなお僕はすごくラッキーだと思います。たくさんの幸運が重なり、またたくさんの方々に助けて頂きました。

米国留学を断念して、下羽ゼミのフィリピン・スタディーツアーに参加する。
TIUで良かったと思うことの一つは、素晴らしい先生たちとの出会いです。中でも、3、4年次のゼミの担当教員だった下羽友衛先生の教えは、僕自身の現在の教育・研究活動の支えとなっています。
 
下羽先生から頂いた言葉で、今でも鮮明に覚えていることがあります。それは「今、米国に行ったらダメになる。留学はやめた方が良い。アジアに目を向けなさい」との一言です。TIUAから帰り、留学試験に合格して、ウィラメット大学で学ぶ権利を得た矢先のことでした。納得できず、先生に何度も問い返しましたが、僕は結局、留学を断念することにしました。
 
下羽ゼミに入った後は、ゼミ主催のフィリピン・スタディーツアーや韓国スタディーツアーなどに参加させて頂きました。そこで見聞きしたもの、学んだことは、僕の一生の宝です。例えばフィリピンでは、国際政治学の理論書を用いて現地の様子をどう説明するか、彼女たち・彼たちが抱える問題をいかに解決するかについて考えました。下羽ゼミにとってのフィリピンは、テキストを深く理解するための一事例では決してなく、テキストから学んだことを実際に生かす現場そのものだったように思います。


下羽ゼミで訪れたフィリピン、レイテ島十字架山にて(2002年)


慶尚大学(韓国)での特別講演にて
「学生交流が東アジアを変える」をテーマに語る下羽先生(2007年)

自分自身と向き合うこと、そして生まれ育った地域について知ることの大切さを知る
フィリピンでは下羽先生とともにNGOを設立し、調査・教育活動も行いましたが、その過程で上手く行かないこともありました。その一つが、自分たちと同世代の現地パートナーを見つけ、関係を築くことでした。
 
失敗の大きな原因の一つは、英語ではありません。それは、自分自身について語ることが出来なかったからだと考えています。当時の僕は、英語はそこそこ出来たと思いますが、自分が生まれ育った故郷の郡山(福島)についてはもとより、川越のことも、日本のことも、相手に伝えることが出来ませんでした。自分がなぜ大学で学ぶのか、なぜ国際関係学を学ぶのかさえ、話すことが出来ませんでした。 
 
日本ではよく「国際理解」や「異文化理解」の話になると、相手のことを知ることの大切さが強調されます。でも、本当の意味で協力し合える関係を築く上ためには、相手のことを知るだけでなく、相手にも自分が何者なのかについて知ってもらう必要があります。そうでないと、そもそも相手から信用もしてもらえません。そのことにフィリピンで気付かされました。
 
大学で教鞭を取り始めて、自分自身に向き合うことや自分の生まれ育った地域について知ることがいかに大切か、改めて実感しています。どんなに勉強ができても、社交的であっても、語学に堪能であっても・・・自分自身について語ることが出来ないと社会でも、世界でも戦っていけないのではないか、と考えています。学生たちにはそれを伝えながら、大学の外に出て、地域で学ぶ実践を展開しています。隔年でフィリピンへのスタディーツアーも実施しています。


学生たちと訪れたサン・カルロス大学(セブ)にて(2017年)

学部時代から20年ほど経ちましたが、学び方も、論文書きも、就職活動も、思ったように行かないことの繰り返しだったからこそ、今の僕がいるのかなぁと思います。そんな中でいつも温かく見守って下さっているたくさんの先生方、先輩・後輩の皆さま、同僚や仲間たち、友人たち、そして家族の皆さんに、三郎さんや五郎さんたちに、心から感謝致します。
 

(西舘崇さんのプロフィール)

福島県郡山市出身 安積高校卒業
2001年3月東京国際大学国際関係学部国際関係学科卒業
(下羽友衛ゼミ、TIUA参加者)
2010年3月東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了
博士(国際協力学)
2010年4月〜2016年3月様々な現場での研究・教育業務
(外務省、シンクタンク、塾、大学等)
2016年4月共愛学園前橋国際大学国際社会学部専任講師
2019年4月共愛学園前橋国際大学国際社会学部准教授
※詳細などについては大学HPの紹介ページにてご笑覧頂けたら幸いです。
→ https://www.kyoai.ac.jp/course-teacher/course-teacher-1372/
 
『日経新聞』(2021年2月10日付)の「UPDATE 知の現場」にて共愛学園前橋国際大学の取り組みが紹介されており、西舘さんの授業の様子も紹介されています。機会がありましたらご覧ください。
 

TIU 霞会シンガポール支部