ハリウッドでビジネスチャンスを掴む。どんな失敗もチャンスに。やらずに後悔だけはしたくない。
青木洋一郎さん(2001年卒業、商学部経済情報学科 佐藤ゼミ/ ウイラメット大学 芸術専攻 2000年卒業) 

将来の夢はハリウッドで働いて、エンドロールに名前を載せたい。
将来の夢はハリウッドで働いてエンドロールに名前がのりたい。そんな夢をもった高校生でした。
ウ大を卒業後、日本に帰国、東京国際大学の4年次に通いながら、デジタルハリウッドに入学しコンピュータグラフィックを学びました。両校を卒業した後、東京のCGプロダクションに就職し日本で約7年働きました。日本からハリウッドで働くチャンスを掴むのは至難の業。またアメリカの学校に通ってCGの技術を高め、本場で就職活動をしなければいけないが、大学院に行くにはお金もかかるし、現在の仕事をやめていく勇気もなかった。

とりあえず3年は日本で働こうと考え、3年経った時に当時のCGプロダクションの社長に「アメリカにいきたいです。」と伝え、「後1年だけでいてくれないか」と言われ、4年働いた後、ロサンゼルスに飛び、3ヶ月の観光ビザで無給のインターンシップに参加しました。日系のローカルテレビ局でのインターンシップだったのすが、私の夢見ていたハリウッド映画の現場とローカル局での環境は期待と違っていたこともあり、ビザと仕事をオファーしてくれる話もあったのですが一度日本に帰国しました。

しかし本場ハリウッドで映画の仕事をしたいという夢を諦めらずフラストレーションがたまる中、生活の為に幾つかCGプロダクションを転職していく中、2008年に、2Dの映像を3Dに変換するという新しい技術を持つベンチャー会社の方にお誘いを頂きました。 初めてその会社の技術を見たときはBack to the Futureを見た時と同じようなとても新鮮な気持ちになり、「これが映像の未来だ!」「この技術は自分をハリウッドの世界に導いてくれる!」というインスピレーションを感じその会社に就職を決めました。

ハリウッドで3Dビジネスのチャンスを掴む。
世界的ヒット・3Dブームの火付け役となったアバターがまだ公開されていない2009年、アバターに出演していたジョバンニ・リビシという俳優とハリウッド映画のプロデューサーが私が働いていたベンチャー会社の「2D―3D変換」技術に興味を持ち、ハリウッドにプレゼンテーションに来てほしいという依頼を受け、英語が喋れる私と上司でロサンゼルスに飛びました。


StereoDを一緒に立ち上げたハ俳優のジョバンニ・リビシと

当初は2週間の予定だった出張はデモ作品を作るために3ヶ月の滞在になりましたが、仕上がりを気に入ってもらい、「ハリウッドで新しいビジネスを始めたい。労働ビザを出したら働いてくれるか」と仕事のオファーを頂きました。
実はこの時はまだ3Dブーム前で、特に日本では3Dの需要が全くない状況で、ベンチャー会社が倒産の危機でした。将来への不安でお先真っ暗状態から突然舞い降りた奇跡でした。「Of course!!」と速答。この時が夢に見ていた渡米、ハリウッドで働くチャンスを掴んだ瞬間でした。

2010年、StereoD設立に参画し、10名のスタッフから800名へ拡張。
2010年、StereoDが設立され、H1ビザが届くとともに渡米し、そこからは怒涛の数年が過ぎました。当初は10名程のスタッフでしたが、一つ目の映画が決まるとともに30名、50名へと人数が増えそれぞれのアーティストにソフトウェアの使い方を指導、自分の担当部分の作成と朝から晩まで働きました。ハリウッドレベルのケータリングの昼飯、夕飯に感動。私の英語を一生懸命理解しようとしてくれる仲間たち。パラマウントスタジオにオフィスを構え、昼休みに撮影スタジオの横を歩くとセットを作っているスタッフや衣装を準備しているスタッフ。食堂ではテレビドラマに出演中の俳優さん達が食事をしていたりとすべてのものが新鮮でした。寝る時間も削り辛い時もありましたが、一から立ち上げた会社、映画のクレジットに名前がのるまで諦められない気持ちとでやり切りました。
1本目の映画が終了するとその他の映画スタジオのクライアントも私たちの技術に興味を持ち始め、デモを作りながら2本、3本と次々と映画作品の数が増えていきました。 最初の2,3年はロスアンゼルスのみでスタッフを抱えていたので気づいたときには仕事の数と比例し200人以上の体制になっていました。
その後、Deluxe Entertainmentというポストプロダクションと合併することになり、親会社のインド支社のスタッフも加わり800名規模の会社になりました。
自分の中では21世紀のアメリカンドリームを実体験しているのではないかと思っていました。

主な仕事内容は2D-3D変換のスーパーバイザーとしてプロデューサーや監督と直接打ち合わせをし、CGアーティストのマネージメント、スケジュールとクオリティー管理をしていました。


StereoD オフィス前

同僚との屋外映画イベント

ジェームズキャメロン監督からタイタニックを3Dにしたいとの依頼を受ける。
ジェームズキャメロン監督からタイタニックを3Dにしたい、という依頼があり競合プレゼンの結果、StereoDが選ばれました。しかし、同じ会社のスーパーバイザーは「King of 3D」とも言われているキャメロン監督の対応や厳しい、大変なプロジェクトだという事を嫌がり、誰も担当をしたがらない状況でした。そこで私が担当に立候補しました。
1年以上かかった大プロジェクトでしたが、キャメロン監督と仕事ができ、ロンドンのワールドプレミアにも両親と共に招待していただき親孝行も出来、思い入れ深い作品になりました。



タイタニック3D レッドカーペット両親とロンドンにて

スティーブン・スピルバーグ監督のジュラシックパーク3Dの空間演出を担当することに。
スティーブン・スピルバーグ監督がジュラシックパークを3D化したいとその後、スティーブン・スピルバーグ監督がジュラシックパークを3D化したいという時に、キャメロンのチームが「タイタニック3Dを担当した同じチームに任せるのがベスト」だと言ってくれたようで、子供のころから好きだったジュラシックパーク3Dの空間演出を担当する運びになりました。まさか自分が子供の頃から大好きなジュラシックパークの3D公開に携われるとは夢にも見てませんでしたし、スピルバーグ監督と対話することができたのは私にとって大きな出来事でした。
その後はタイタニック、ジュラシックパークの3D化の実績を買われ、大きな映画の担当になることがどんどん増えていき、キャメロン監督とはターミネータ2、スピルバーグ監督とはThe BFG, Jurassic World, Ready Player Oneで一緒に仕事させていただきました。また多くのファンがいるStar Warsのスピンオフ映画、Rogue One, Soloも担当できたのは光栄でした。


Rogue One / Star Wars Story スタッフ完成試写会



Solo / Star Wars Story スタッフ完成試写会

現在は、2022年公開予定ジュラシックワールド3を担当/制作中。
2019年より2DVFXプロダクションとして、数々のオスカーやアカデミーの賞を受賞しているDNEGに移籍し、現在は2022年公開予定ジュラシックワールド 3を担当/制作中です。

担当作品として

  • ジュラシックワールド3(2022公開予定)
  • スパイズ・イン・ディズガイス オープニング/エンデイング(2019)
  • ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー(2018)
  • レディ・プレイヤー1(2018)
  • ザ・マミー/呪われた砂漠の王女(2017)
  • ターミネーター2 3D (2017)
  • ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー(2016)
  • ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016)
  • ジュラシックワールド1(2015)
  • ゴジラ(2014)
  • ジュラシックパーク 3D(2013)
  • タイタニック 3D(2012) 等

TIU入学は姉(教養学部)の勧めで、ウイラメット大からアメリカ映画業界就職のチャンスを得る。
TIUに入学を決め理由は2歳上の姉がTIU教養学部でTIUAに参加し、姉と母親がいい大学だと勧めて来たことがきっかけでした。TIU商学部に合格していたものの、志望していた大学は不合格で浪人をかんがえていたのですが、母親から「浪人して他の大学にギリギリ入るより、TIUで一番になりなさい。」と言われたことと、留学にはすごく興味があったのでTIUへの入学を決断しました。
私が入学したころは現在のように画像、映像ソフトは初期段階のもので高価なものであまり普及していなく使い方を教えてくれる学校もあまりありませんでした。商学部経営情報学科のプログラミングをつかったビジュアルベーシック、プログラムでゲームを作ったり画像をつくる事が勉強できるという事で佐藤ゼミ生になりました。しかし、プログラミングはとても難しく断念してしまいました。今となれば、頑張って習得しておけばよかったと思う事の一つです。

部活動は2年次からTIUAと決めていたので、入る予定がなかったのですが、少林寺拳法の勧誘で見学に行ったまま断り切れずに入部を決めてしまいました。部活で素敵な先輩や友達ができ、同じ同期から他2名も一緒にTIUAに参加しました。またTIUAスタッフの島田昌己 さんが元少林寺拳法部所属だったこともあり、TIUAでも少林寺拳法を続け、日本カルチャーを紹介する機会があれば型などを披露し喜んでもらえる事もあり少林寺拳法部に入ってよかったなと思いました。1997年度は98名のTIUA生がいたので一度に100人近くの友達ができ、一つのキャンパスで濃厚な一年を海外で過ごすというのはTIUAでしかできない貴重な体験だと思います。

ウ大への長期留学当初は文化人類学を勉強しようと決めていました。しかし、授業に参加してみると自分の学びたい事と方向性が違っていたこともあったことと、芸術専攻の先生がギリシャ絵画専門の先生でギリシャで考古学の研究もしていたこともあり、コンピュータグラフィック、映画の仕事がしたいと高校卒業時に決めていたので、芸術の基本を学んでおくことは必須かもしれないという事で芸術専攻に切り替えをました。TIUから観察で来ていた教授に「専攻は何をしているんだ?」と聞かれ、周りの同期は社会学、経済、ビジネスと返答しているなか、私が「芸術です。」と答えると「何でそんなことを勉強してるんだ。」と言われ悔しい思いをしました。

しかし、アメリカの大学のいい所は、入学した後に自分の勉強したい専門を決められる事だと私は実感しました。日本の大学は入学試験に願書を出す時点で自分の専攻を決めていなくてはいけませんし、変更もできません。 きっと私も日本で文化人類学でどこかの大学に合格していたら、そのまま文化人類学での卒業を目指していたと思います。

芸術専攻で卒業して本当によかったと感じた時は、もちろん芸術の基礎を学べたこともありますが、アメリカで映画業界への就職のチャンスがあり、H1ビザ(就労)の申請の時にUnder Graduateでの専門が芸術だったことで申請へとても有利だった時です。もしここで全く違う専攻で卒業していたら、応募資格がなくせっかくのチャンスを逃していたかもしれないと知ったときは、専攻変更を勇気を出して決断してよかったなと思いました。


ウ大時代のルームメイト、マットとNYで再会

芸術専攻卒業作品の一つ「RED」

留学中バイトさせてもらった思い出の場所「BISTRO」 

「どんな失敗もチャンスに。チャンスを見逃すな!やらずに後悔だけはしたくない。
自分の生き方には「やらずに後悔したくない。失敗しても、その失敗をいい経験にすればいい。」というモットーをもって常に前進しようと心がけています。
興味、そしてチャンスがあったらとりあえず飛び込む。失敗は怖いけど、なんとかなるだろうという気持ちで乗り越えてきました。
何が正しい生き方、正解なんて一生わからないと思います。人生は一度しかないし、チャンスは何度も巡ってこない。

留学から学んだ事として、自分の意見を発言する、伝えることの大切さです。ディスカッションして他人の意見を聞く。その中で新しい事が生まれたり、自分だけでは思いつかなかったアイデアが浮かんだりする。黙っていては自分の存在はないものに等しい。他人がいるから自分の存在がある。黙っていては誰も認めてくれないし、助けてもくれない。そういう仲間、クライアントとコミュニケーションを繰り返すことによってにネットワークがどんどん広がっていきます。例えば夢があったら周りにどんどん話していくなど、声に出すことの大切さは未だに感じています。声に出すことによって周りの人がチャンスを運んでくることも多々あります。TIUA、ウ大で習得した英語力、コミュニケーション力が今の私の大きな支えになっています。

留学時にお世話になった先生や学校のスタッフの方々に「いつか映画のエンドロールに名前がのるように頑張るので楽しみにしていてください」とメッセージを残して卒業しました。とりあえず無事にその目標を達成できたことは本当によかったと思います。ハリウッドで働いて約12年、引き続き多くの人に楽しい時間や感動を与えられる映画作品に携わっていけたらと思っています。そして多くの人と出会いいろんな経験をして行きたいです。もう43歳になりますが気持ちは学生の時と全く変わっていせん。



 

(青木 洋一郎さんプロフィール)

  • 宮城県仙台市生まれ、桐光学園高等学校卒業
  • 2001年3月 東京国際大学商学部経済情報学科卒業 佐藤ゼミ 少林寺拳法部
    ( 2000年ウイラメット大学 芸術専攻卒業)
    デジタルハリウッド東京本校にて学ぶ。
  • 2001年卒業後、株式会社トマソン、株式会社オムニバスジャパン等を経て、立体映像 / 2D-3D変換の世界に飛び込む。
  • 2010年にStereoD LLCの設立に参加し、「タイタニック 3D」「Jurassic Park 3D」、「GODZILLA ゴジラ」などの3D演出を担当。
  • 2017年「Star Wars : Rogue One」と2019年、「Ready Player One」にてLumiere Awardで2D-3D部門受賞。
  • 2019年DNEGに移籍。現在は2022年公開予定ジュラシックワールド3を担当/制作中。
DNEG会社ホームページ
https://www.dneg.com/stereo/
 

TIU 霞会シンガポール支部