ワークライフバランスを取りながら世界の脆弱な人々へ支援を
河野雄太さん(2009年卒業 言語コミュニケーション学部 岩崎ゼミ/ウィラメット大学 社会学部 2008年卒業)

(学生時代からの目標だった国連に出勤:国連開発計画(UNDP)アフリカ地域センター前にて Addis Ababa/ Ethiopia)

1. 自己紹介、大学卒業から現在まで
2009年TIU言語コミュニケーション学部卒業(岩崎ゼミ)、2008年ウ大社会学部卒業の河野雄太と申します。現在は国連開発計画(United Nations Development Programme: UNDP)インド事務所で持続可能な開発目標 (SDGs)を地方に促進させる部署で勤務しています。また、日本企業とUNDPの連携についても担当しています。

大学時代は長期留学の奨学金を勝ち取るためにTOEFLの勉強に打ち込んだり、ウ大では膨大な量の課題に圧倒されながらもそれをこなしていく中で英語力が上がっていきました。ボランティア活動やアルバイトもやって大変ながらも楽しい学生生活を送ることが出来ました。卒業後も学生時代にお世話になった言コミの岩崎先生や国際関係学部の金先生、同窓生数人とは折に触れて連絡を取っています。


(TIUのラウンジで留学生の友人と)
 
大学卒業後はJICAの青年海外協力隊に参加し、インドの農村部で約2年間、妊産婦や新生児がかかる診療所環境の改善に取り組みました。その後、イギリスのブラッドフォード大学で紛争解決学の修士号を取得し、公益財団法人アジア福祉教育財団で日本国内の難民支援の現場で日本語教育や緊急性の高い人々に対する保護措置(生活保護の様な支援)に携わらせていただきました。また、国際NGOのADRA Japanでは、エチオピアの南スーダン難民支援に従事させていただき、難民キャンプでトイレ建設と衛生啓発活動を通して衛生環境の改善に取り組みました。


(難民キャンプでの活動の合間、キャンプ近くでエチオピア人の同僚と休憩
Gambella/ Ethiopia)
 
2019年から外務省の平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業に参加し、国連開発計画(UNDP)のアフリカ地域センターで、平和構築・ガバナンス専門官として勤務し、2020年から日本政府のJunior Professional Officer (JPO)派遣制度に参加し、UNDPインド事務所にて勤務しています。

2. SDGsについて
SDGs-持続可能な開発目標はSustainable Development Goalsの略で、2015年に日本を含む国連に加盟している193カ国が全会一致で採択した2030年までの15年間の行動目標です。SDGsでは貧困、食料、環境、ジェンダー、クリーンエネルギー等17の目標と169のターゲットがありますが、途上国だけでなく先進国にも関係のあるものも多いです。SDGsは多くの分野を含んでいるため理解するのが難しいですが、一言でいうと「自分たちの子供の世代、孫の世代に今のような地球を受け継いで行くためにいろいろな問題を解決しよう」という目標です。現在人類は地球1.7個分の生活をしていると言われており、持続可能ではありません。このままではいずれ後の世代は今の様な地球で暮らせないと言われています。将来の世代のための資源に手を付けない範囲で経済発展しようというのがSDGsの考え方です。

 

3. これまでの仕事で印象的だったこと

政治的コミットメントを得るということ
途上国では政治的なコミットメントを得ないと物事が進まないことが多くあります。例えば担当者レベルでこう進めて行こう、と合意してもそれが遅々として進まないことがあります。また、そもそも担当者レベルで話がまとまらないことも良くあります。そういう環境では相手国政府の高官等地位の高い人達と会議の場を持って定期的に支持を得ておくことである程度こうした状況を回避することができます。国連の現場で途上国での物事の進め方を学んだ経験でした。


(エチオピア政府、政府間開発機構、UNDP職員でエチオピア、ケニア、ソマリアの国境地域に出張  Addis Ababa/Ethiopia)
 
コロナ禍では最も脆弱な人々が大きな影響を受けるということ
コロナは途上国でも甚大な被害を与えています。例えばアフリカの角地域では感染防止策の一環として国境が閉鎖されてこれまでの様にビジネスができず、経済活動に大きな影響が出ました。さらにそうした時期にバッタが大量発生しこの地域の農業に大打撃を与えました。生きていくために人々は残された湖や川などの水資源や家畜を育てる牧草地等に集まることになります。しかし、資源が十分に無いため部族衝突が起こり、紛争に発展することもあります。しかもこうした資源は気候変動により規模が少なくなっています。既に何重もの課題がある地域にコロナが蔓延する影響は先進国での蔓延とは比べ物になりません。

第二波がインドを襲った際、ピーク時の1日の新規感染者数は40万人を超えました。医療用酸素の不足は特に深刻で、感染した家族や愛する人々の酸素を確保するために走り回る人々の姿や、入手の目途が立たず途方に暮れたり涙したりする人々の姿が連日ニュースやソーシャルメディアで取り上げられました。こうした状況の中、UNDPは日本政府、インド政府と連携し医療用酸素プラントを建設することで地方病院のコロナ対応能力を大きく向上させました。


コロナ禍を技術革新で乗り越えていくインドの力強さ
インドのデジタルの発展には目を見張るものがあります。大都市ではオンラインで食料や日用品全般の購入、自宅までのデリバリーが安価ででき、コロナ禍でも外出する必要はありません。PCR検査はwhatsapp で予約し自宅でサンプル採取が1,000円程度で出来ますし、結果はEメールで受け取れます。ワクチンの予約や証明書の発行もオンラインで出来ます。農村部にもデジタル化の流れは届いており、アマゾン等を活用しオンランで農村で作った商品(織物、服、電飾、食料品 等)を売ることができます。また、農村から出ることなくスマートフォンで様々な情報(例えば政府の公的支援情報)にアクセスすることが可能になってきています。地方でも電子決済が進んでおり、屋台や露店でもQRコードで支払うことができます。コロナ禍という未曾有の事態にもデジタルイノベーションを通して適応、発展していくインドの力強さを感じました。


(インドの農村地域で小規模ビジネスに取り組む女性グループを視察 Uttarakhand/ India)
 

4. 自分自身の生き方、これからやりたいこと、皆さんのメッセージ
私は仕事はプライベートを充実させるための手段と考えており、家族との時間を仕事よりも大切にしたいと思っています。その上で世の中の弱い立場にある人のために働いたり、行ったことのない国や文化に触れたり、SDGsを進めるための活動ができればと考えています。この場をお借りしてみなさんに伝えたいことは、買い物は選挙だということです。世の中には様々な商品がありますが、地球環境、人権、労働環境、フェアトレードに配慮した製品を購入することで、優良企業を応援することができます。もし消費者の多くがそのような基準で買い物をすれば、配慮していない企業も自社の商品やバリューチェーンを見直さざるを得ません。私たちは日々の買い物を通して世の中をを良くすることに貢献できるのです。全ての買い物でこれをやるのは大変ですが、先ずは一品、そのような基準で購入してみては如何でしょうか。


(妻と休暇先のモルディブで)
 
 

(河野雄太さんプロフィール)

1986年      埼玉県川越市生まれ
2004年   狭山ヶ丘高校卒業
東京国際大学言語コミュニケーション学部入学
2008年   ウィラメット大学社会学部卒業
2009年   東京国際大学言語コミュニケーション学部卒業
JICA 青年海外協力隊員としてインドへ
2012年   ブラッドフォード大学 紛争解決学部 修士課程修了(イギリス)
2012-2015年 公益財団法人 アジア福祉教育財団 難民事業本部 難民相談員、
プロジェクト・マネージャー (日本)
2016-2019年 国際NGO ADRA Japan プロジェクト・マネージャー (エチオピア)
2019-2021年現在国連開発計画 (UNDP) 
  • 平和構築ガバナンス専門家 (エチオピア)
  • SDGsコーディネーター (インド)

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    TIU 霞会シンガポール支部