人脈は自分を映す鏡
草川 友輝さん(2008年 言語コミュニケーション学部卒業)

現在ニューヨークで会社を設立し、日本の商品をアメリカに広める事業を展開しています。やっと軌道に乗り始めたビジネスですが、平坦な道ではありませんでした。しかし、全ての経験があって今の自分があると強く感じています。私の体験談が少しでも皆さまのご参考になればと考え、僭越ながら寄稿させていただきます。

東京国際大学卒業後は、カンザス州立エンポリア大学大学院で第二言語としての英語教授法TESOLを専攻し、卒業後は経済の中心地であるニューヨークへ移りました。ローカル向けの日系新聞社に就職し、社会人1年生として営業の基礎をここで身につけました。


 (エンポリア大学大学院卒業式)


(Daily World Press時代)

(Daily World Press退職時)

ニューヨークで初めての挫折
2年ほど勤めた後に転職を決意しますが、ここで最初の苦難に直面します。転職先から就業開始1週間前に解雇を告げられました。あまりのショックに声が出なくなる症状に見舞われるなど、人生で初めてと言って程の大きな挫折感を味わいました。
ビザの問題もあり、一旦は前職に戻りましたが、再度転職を試み、今度はスペイン系の食品輸入会社に採用されました。英語に加え、スペイン語でのコミュニケーションが思った以上に求められる現場で、営業にはある程度の自信があったものの、思うように成果を出せず試用期間3ヶ月で退職に至りました。立て続けに転職に2回も失敗し、自信を失い途方にくれていたタイミングで知人の人材派遣会社の社長から紹介されたのが、その後の私の人生に大きな影響を与えることとなる大手日系問屋のJFCでした。

日本食品をアメリカに
JFCでは、日本の食品をアメリカ市場に広めるべく、スーパーマーケットや食料品店、レストランを周り、既存の顧客はもちろん、新規開拓を通して売り上げを伸ばす営業職に従事しました。
3度目の正直で、これ以上は失敗できないと死に物狂いで働きました。営業車に載るだけの商品を積み込み、ニューヨーク州郊外の店舗を朝から晩まで回る日々は、今思い返しても苦しい時期でしたが、当時の支店長が尊敬できる方で、私に信頼を寄せてくれたおかげで、途中で音を上げずに続けることができました。
地道な営業活動で成績を伸ばし、入社から4年後にはマンハッタン区の担当を任されることになりました。最終的には、売り上げ昨対比180%増加を達成し、営業トップの成績を収めるまでに至りました。

海外に出て、日本の良さを再認識するというのはよく聞く話ですが、私もまた、日本の食文化は世界に誇れるものだと、その価値を強く感じています。2度の転職失敗を経て、JFCに入社したことで、アメリカでの日本食市場の可能性を発見し、さらに日本食文化を広げていきたいという自分のキャリアにおける目標が明確になりました。


(JFC International時代に同僚と)

会社設立して奮闘中
以前から、いつかは自分のビジネスを立ち上げたいという漠然とした夢は抱いていたのですが、大手企業での営業経験を積んだことで、キャリアビジョンを具体的に描けるようになりました。JFCは全米最大級を誇る日本食品の卸企業で、商品数は1万品を超えます。営業成績で数字を伸ばせても、次第に満足感や達成感を得られなくなり、もっと商品数を限定し、特定の商品に注力して、売り上げをサポートしたいという思いで、現在の会社設立に至りました。

JFC時代に良好な関係を築いた西海岸に拠点を置く日本酒の輸入業者や、九州の酒造会社をクライアントに迎え、主に営業代行を行いながらビジネスを展開してきました。事業立ち上げ早々パンデミックに見舞われ、軌道に乗せる前に様々な計画が頓挫し、非常に苦しい時期もありましたが、クライアントの支援を得ながら乗り越えることができ今に至ります。今もお世話になっているクライアントに、あの時の恩返しをしたいという思いを原動力に今も奮闘しています。

現在では、ニューヨーク周辺に注力していた営業エリアをオハイオ州、インディアナ州、ケンタッキー州など、まだ日本酒の認知度が低い中西部にまで拡大し、市場の開拓に取り組んでいます。また、営業代行に加え商品の共同開発を手掛けるなど、新しいプロジェクトにも挑戦しています。


(2020年にN.Yで会社設立)


 (Global Sales Forceの日本顧客の方々と)

大学時代の思い出
私は幼い頃に、親の都合で2年ほどアメリカのカンザス州に住んでいました。2年と言っても0歳から2歳までの間でしたので、その頃の記憶はほとんどないのですが、英語を話せるようになっていつかはアメリカに行ってみたいという思いは常にありました。

進学の際、まずは海外出身の人たちと交流を図れる環境を整えたいと考え、交換留学生が多い東京国際大学を志望しました。言語コミュニケーション学部は新たに設置された学部ということもあり、充実したプログラムを提供しようと、教員の方々が積極的な取り組みをなされている印象を受けました。また、多くの交換留学生との交流を通して、日本にいながら様々な文化を学ぶことができ、大きな刺激をもらいました。
そこで出会った同級生たちとは今でもたまに連絡を取り合う仲で、ヨーロッパで外交官を務めるアリゾナ州出身の友達や、国連職員となったドイツ人の友達など、国際的に活躍する彼らとのつながりを築けた大学時代は大きな財産となっています。

当時の私にアドバイスするのであれば、もっとしっかり勉強して、成績を上げておいた方が良いと伝えたいです。というのも、在学中のGPAが低く、提携校であるアリゾナ大学の交換留学プログラム選考に落ちるという、ほろ苦い経験があるからです。一年後に留学を終えて帰国する同級生たちに、英語力で大きな差をつけられてしまうと思うと非常に悔しく、負けたくないという思いで、学校での勉強に加え、海外ドラマのセリフを暗記したりするなど、必死に英語力向上のために勉強をしたのを覚えています。 今となっては、その時の努力があって今の自分があると思っていますが、あの時に交換留学プログラムに参加できていたら、また違った可能性が広がっていたのかもしれません。


(TIU English Loungeにて)


(TIU時代の盟友とワシントンDCで再会)

TIU受験生/在校生へのメッセージ
私は、一期一会を心に置き、常に楽しく新しいことに挑戦するというモットーを胸に精進してきました。可能性を広げるためにも、勉強はもちろん大事ですが、それに加えて人との出会い、つながりを育むことも非常に大切だと思っています。人との関わりを通じて、新たな視点や発想を得たり、思わぬチャンスが舞い込んでくることさえあります。私が唯一誇れる長所と言えば、出会いを大切にし、築いてきた素晴らしいネットワーク(人脈)です。

実際、今の私のキャリアは、自分一人のスキルでは達成し得なかったものばかりです。転職に失敗しどん底にいた時に仕事を紹介してくれた知人、営業トップの成績に導いてくれた上司、会社設立当時からパンデミックによる危機的状況を支えてくれていたクライアント。私のキャリアにおける転機は、常に出会った人々がきっかけをくれ、支えてくれました。
出会いを大切にし、人と人を繋ぐ。自分が繋いだ人たちが将来の自分を助けてくれるはずです。「龍馬になれ」という私が掲げている座右の銘で、締めの言葉とさせていただきます。

(草川 友輝さんのプロフィール)
2008年3月東京国際大学言語コミュニケーション学部卒業。2009年に渡米。エンポリア州立大学院にて第二言語としての英語教授法TESOLの学位を取得し、2011年にニューヨークに渡りローカル日系新聞社のDaily World Pressに入社する。その後スペイン系の食品輸入会社Catalon Gourmetを経てキッコーマン傘下の大手日系問屋JFCに入社し、日系マーケットの営業として7年間従事する。2016年〜2018年の2年で営業売上高約180%を達成。2020年1月からGlobal Sales Force代表として本格的に始動開始に至る。 Global Sales Force, Inc.ウェブサイト
https://globalsalesforceinc.com/
2001年津高等学校卒業
2004年東京国際大学 言語コミュニケーション学部入学
2008年卒業
2009年渡米、カンザス州立エンポリア州立大学大学院入学
2011年カンザス州エンポリア州立大学大学院卒業
2011年ニューヨークへ
2011年Y’s Publishing Group 子会社 Daily World Press, Inc入社
2013年Catalan Gourmetへ転職
2013年JFC International へ転職
2020年Global Sales Force, Inc. 設立、 Founder & CEO
現在に至る

 

TIU 霞会シンガポール支部